マーケティングとスキー学習の共通点

今日は、スキー学習とマーケティング学習について説明します。どちらも、すごく構造が似ているので、例え甲斐があります。

ポイントは「最も重要なスキルを、最初っから探究するように学ぶ」です。

スキーで、最も大切な能力

まずは、前置きです。

私はスキー部でもなければ、スキーのインストラクターでもありません。等級もバッジも持ってません(取りに行く理由がないし、そんな時間もないです)。スキーは、半分は研究の一貫で始めました。

大学院生のとき、私はいわゆる「人工知能」という研究分野にいました。最近はやりのニューラルネットワーク(今は、多層になって、様々なテクニックが生まれて、ディープラーニングと呼ばれています)も、多少は使いました。

研究をする中で、「おいおい、人間や動物の持つ知性ってやつは、全然違うぞ」と、鮮明に感じるようになりました。人工的な知能について考えることを通じて、生物が採用する全く違う知性の側面をはっきりと感じるようになりました。

そのような時に、偶然にもスキーに出会い、「スキー教室に通わず、書籍とDVDだけで、スキーを学んでみよう!」と思ったのがきっかです。

最終的には、教室に通わず、知人でスキーができる人は一人もいなかったので、直接誰かに教えてもらったことはゼロです。

ところが、後輩で等級を持つスキー歴10年以上(当時の私は、3年目、年に10回も行ってない)に、「めちゃめちゃうまいですね!なんというか、スムーズというか、エレガントっていうか、すっごい綺麗。亀田さん、試験受けたらとりあえず、二級は取れるんじゃないですか?」って言われました。

実は、私がすごいのではなく、これは「ラーニングの研究(当時は、起業するなんて思っても見なかった)」の一環でもありました。

私が、やってみたことは「人間の脳のフィードバック制御能力は、どれぐらいすごいのか?」です。

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すみません、話が脱線してきました。この続きも、すごく面白いと個人的に思っているのですが、今はマーケティングの話ですので、一気に割愛します(別の機会に話しますね)。

とにかく、スキー上達の最大のポイントは、「足の裏(板全体)」の感覚にあります。自分の体重が、どこにどれぐらい乗っているのか、さらに板全体が、自分の素足になるぐらいのイメージを持って(拡大脳ってやつです)、それを把握することが重要です。

そういった能力を磨くことで、その上に、バッチリ、テクニックが乗っていきます。

はじめて、板を履いた時から、できるし、楽しめる

この「足の裏」に注目したのには、先人の知恵もありますが、学術的なアプローチからの結論でもあります。それを語り出すと長いので、割愛しますが、とにかく「足裏感覚(重心、体重、凸凹、しかも足裏ではなく、板裏全体です)」を感じることが大切です。

※ 以後は「板裏」「板裏感覚」と呼びます

板裏感覚は、スキーをはじめての人にこそ重要です。これまで、運動音痴(大学院で探せば、すぐ見つかる(笑))と自他ともに認める人たちで実験してきましたが、毎回、面白いことが起こりました。

それは、「最初っから、楽しい!」となって、しかも「グングン、上達する」ことです。

初心の技術の重要性

スキーをはじめて取り組む時に、板を履いたら、「平地(水平)」をズルズルひきづりながら歩きます。この時、常に、雪を感じる、雪のモゾモゾ、カリカリ、グリグリ、キュッキュを感じるようにします。

その様子を「言葉に」したり、お互いに話したりします。僕は、こう感じた、私は、こう感じたなど。これだけでも、意外に盛り上がります。

そして次に、子供用ぐらいの本当に緩やかな、真っ直ぐの坂に移動します。そこで直滑降というのですが、二本の板を並行にしたまま、ただただ真っ直ぐに滑り落ちることをします。カーブとかなしです。最終的には、平らなところで、自動的に止まるような場所を選びます。

初心者だと、ゆっくりでも、滑り落ちると怖く感じるかも知れませんが、「板裏の感覚だけに全神経を研ぎ澄ます」とすれば、恐怖なんて感じません。楽しむことができます。それに、緩い坂なので、小走りぐらいの速度しか出ません。

私はファシリテーターとなって、伴奏しながら、「板裏の感覚に意識を向けてー」「どう?モゾモゾとか、ガタガタとか、雪の堅いところが通り抜けたりとかするのを感じて」と言いつつ、「僕は、こんな感じだー」と言葉にして見本を見せながら伴奏します。

板をつけて、まっすぐ、小走り程度で、滑り落ちるだけなのですが、やってみたらわかりますが、すごく楽しい!ってなります。

これは全神経で、自然の変化を感じている状態です。かっこよくいうと、マインドフルネスに近いでしょう。また「感じる」という行為は、体の力を抜いて、機敏な状態を作ります。力をギューといれたままでは、センサーは働きません。これが、スキーでは大事です。急な変化に、さっと対応する柔軟性を保つことができます。

ボコボコの斜面でも、滑り降りれる

こうやって楽しんだあと、もう少しチャレンジをします。ゆるい坂の端に移動して、ボコボコになっている(整地していない場所)とこに連れていき、そこでも同じことをします。

ボコボコの斜面というのは、左右の足を柔軟に上下させて、体重も前や後ろに小刻みに移動させないと、うまくバランスを取れません。そんなところに、まっすぐしか滑れない人を連れて行くのですが、これが大抵はうまくいきます。

ちょっとだけコツがあって、車輪を転がしているイメージをするんですが、とにかく、感じながら、車輪をコロコロするイメージをします。そしたら、横から見ているとわかりますが、ものすごくうまく屈伸させたりしながら、ボコボコの道をざーーと降りていきます。

それをデジタルカメラとかで撮影してあげて、見せてあげると、みんな「おおー、俺ってすごい!」と喜びます。

板裏感覚は、ずっと大事

この板裏感覚は、ボーゲン(ハの字)、パラレル、カービング、大回り、小回りと高度な技術に進んだ時も、ずっと重要です。ひたすら、感覚を頼りに、アンギュレーションとかも実験します。

スキーの体の使い方は、セオリーはありますが、みんな体の形、柔軟性、体重の分布が違うので「全員、違う形」になります。自分なりの形を見出すには、「板裏感覚」が頼りです。

話をまとめると、

  • 最初の最初の「学びはじめ」で、最も根本的に重要なことから入る

  • その重要なものを「探究する」ように学ぶ

  • 今後も、ずっと、ずっと、ずっと、応用に進んでも、感覚を磨く

となります。

マーケティングで考えてみよう

マーケティングの父、フィリップ・コトラーは以下のようなことを言っています。

マーケティングは1日で学べる。しかし、使いこなすには一生かかる

スキーも同じです。大事な板裏感覚について理解することは1日でできます。でも、スキー道?は、一生続きます(子供が生まれてからは、行ってないんですよねー。行きたい)。

これと同じで、マーケティングで「最も重要なこと」から始めることが必要です。何をやっても、どんなテクニックを学んでも、知識や体系を学んでも、常に帰ってくるべきことから、スタートしなければなりません。

私は、ラーニングの専門家であって、マーケティングの専門家ではない

ところで、書いているうちに「なんだかエラソーだなー」と自分で思ってきました。これだけ、これが大事だ!!と主張していると、さも「マーケティングに精通している人」と思うかも知れません。

実は、「並みレベル」です。

マーケティング関連の書籍は、10冊ぐらいしか読んだことはありません(全部、堅そうな本ではありますが)。マーケターと名乗ったこともありません。

しかし、「ラーニング」や「どうやって、学べば良いか?」を分析することに関しては、専門家だと思っています(でも、まだまだだーーーと日々反省しています)。

ラーニングの立場から考えて、マーケティング学習において「キーとなる、最も重要な要素」は何か?と、あれやこれや思案していたのですが、答えは「言葉に」ありました。

マーケティングとは?

マーケティングとは、「Market」に「ing」がついています。マーケットとは、市場のことです。市場の最小単位は何か?というと、「人」です。具体的には「顧客(お客さん)」です。

拍子抜けするぐらい、そして「当たり前だろう」と言われるのは承知で、マーケティングでもっとも大切なもの、スキーでいう「板裏感覚」にあたるものは、

「顧客感覚」

です。顧客の感覚になりきって、あるいは顧客の無意識の頭の中で起こる推論、思案、不安、希望・・・そう言ったものを、探究し、自分が「顧客になる」ということが、マーケティングの根本です。

マーケットを相手にするとなれば、いろんな戦術が考えられますが、例えば、

  • 7種類のお客さんになって、その全員に70%の合格点をもらう顧客体験、商品のあり方を考える

  • ほとんどそっくりの5人のお客さんになって、その全員に95%の合格点をもらう顧客体験、商品のあり方を考える

それぞれ「大勢に販売する」「ニッチ市場」と違いはありますが、大切なことは「顧客感覚」です。

探究するように学ぶ

要するに、こう考えてればすっきりすると思います。

「顧客感覚を得るには、どうすると良いか?どんな方法が有効か?」を問い続けながら、「顧客になった時、今の自分のビジネスって、どう見える?」という問いを、どんなテクニックを学んだときでも、戻ってくること

これが、初心です。入り口は、ここからであり、ずっとこの道を歩くということです。

例えば、マーケティング・ファンネル・モデルを学んだ時、ビジネスの全体像が見渡しやすくなります。しかし、そのファンネルの中を「顧客になって、体験してみるシミュレーション」をしないと、良い仕組みを作ることはできません。

「顧客感覚を得る方法」「顧客感覚でビジネスを眺める方法」「様々な顧客感覚から、どうするか意思決定する方法」

これらに戻ってくることになります。

最初の第一歩は、「シンプルな質問からはじめてみよう!」

スキーでは、「ゆるい、ゆるい坂」を直滑降することからスタートしました。ベクトル、荷重、抵抗、板の回転半径との関係など物理学的なことではなく、「板裏感覚」を磨くために、「ゆるいゆるい坂で直滑降」を選びました。

これと同じで、マーケティングでは「シンプルで、質問しやすく、お客さんも答えやすい「問い」」から始めると良いと思っています。

その問いとは、

「なぜ、他ではなく(ライバルを挙げる)、私たち(あるいは商品名)を選んでくれたのですか?」

です。

次回は、この問いについて、色々と議論したいと思います。そして、この問いを繰り返すことで、どんな結果を得られるかについても話します。

面白いことに、こんな問いですが、積もり積もったら、すごいことが起こります。ビジネスを劇的に成長させることすら可能だと考えています。というか、原点ですから、当然ですね。

それでは、また次回に。